七色雑記

背景

今年の夏，Charlotteというアニメが放映され，そのヒロインである友利奈緒のかわいさが大きな話題になりました．特にTwitterでは，彼女のかわいさに頭をやられてしまったオタクたちが次々と友利奈緒を名乗り始め，一時Twitterに大量の友利奈緒が発生する事態となりました．

TVアニメ「Charlotte(シャーロット)」公式サイト

私の周りでも，友利奈緒は大変な人気でしたが，普段アニメを見ない私は，特にそれを気に留めることはありませんでした．しかし，アニメが終盤に近づくにつれ，周りが友利奈緒へのさらなる熱狂をあらわにするようになると，私もだんだんと友利奈緒の存在が気になりはじめ，放映が終わってから友人に録画を借りて視聴しました．

その結果がこちらです．

友利奈緒ちゃん尊い

— 【手動】友利奈緒 (@idzuna_tan) 2015, 10月 7

ひとたび友利奈緒の尊さに脳が支配されると，私の足は独りでに，ゲーマーズとアニメイトが入居するモリシア津田沼へ向かっていました．そして気づいたら，店頭に並ぶグッズ類や友利奈緒が表紙の書籍を買いあさり，ブルーレイディスクを全巻予約していました．

しかし，グッズを手に家へ帰る私は満足していませんでした．私が最も必要としていたもの，友利奈緒の抱き枕がなかったのです．インターネットで探してみると，同人の抱き枕カバーはいくつか見つかったものの，公式の抱き枕カバーは発売されていないようでした．おそらく待っていればそのうち発売されるだろうとは思いましたが，それを待ちきれない私は抱き枕カバーを自作することにしました．

素材イラスト

抱き枕カバーを作るには，印刷するイラストが必要です．私はまず，アニメの映像の中から，加工して抱き枕にできそうなシーンはないか探しました．しかし，全身が映っていて抱き枕にできそうなものというと，外国人に捕まりあられもない姿で吊り下げられているシーンくらいしかなく，さすがにこれ抱き枕にするのは気が引けたので，別のイラストを探すことにしました．

素材の候補として次に探したのは，雑誌の描き下ろしページやピンナップでしたが，こんどはあっさり見つかりました．電撃G'sコミック2015年11月号の描き下ろしポスターです．

電撃G’sコミック2015年11月号 | 電撃G's magazine.com

まさに抱き枕カバーにふさわしいイラストです．これをスキャンして抱き枕カバーへ印刷することにします．

スキャン

まずは，ポスターをスキャナでデジタル画像化します．B2サイズのポスターを一度のスキャンで取り込むのは不可能なので，何回かに分けてスキャンして，後で合成します．下の写真では複合機のスキャナを使っていますが，本当は専用機を使った方がきれいにスキャンできます．特に，折り目のあるものをスキャンするときには，厚みのあるスキャナのほうが陰ができにくいです．

下の写真では，折り目の部分が浮いてしまわないように，白い板（カラーボックスの棚板）を置いてポスターが原稿台に密着するようにしています．

スキャン時の設定はお好みですが，私はいつも，自動色調補正や自動ノイズ除去などは無効にして，取り込んだあとに自分で補正しています．

ただし，モアレだけは，一度発生してしまうと後から取り除くことができないので，スキャナのドライバにモアレ除去のオプションがある場合は必ず有効にしておきます．これを有効にすると，スキャン時に設定よりも一段階高い解像度でスキャンした上で，モアレが起きないようにフィルターをかけてから，所望の解像度の画像を生成してくれます（たぶん）．

スキャンした画像の合成には，Microsoft ResearchのImage Composite Editorを使いました．このソフトは主にパノラマ写真の合成に使わるものですが，スキャンした画像の合成にも威力を発揮します．高解像度の巨大な画像でも，十分なメモリさえあれば，落ちたりエラーを吐いたりすることなくきちんと合成してくれます．

Image Composite Editor - Microsoft Research

色調補正

画像を取り込んだら，次に色調補正をかけます．一般に，制作者が持っているオリジナルの画像データと，その印刷物，そしてそれをスキャンしたものでは，色合いに大きな差があります．下の画像はG's magazine.comに掲載されている画像ですが，先ほどの取り込んだ画像とはかなり色合いに差があることがわかります．

この画像に色合いが近づくように，スキャンした画像を色調補正します．

色調補正には，PhotoshopやGIMPなどを使ってトーンカーブや色相，彩度などをいじるのが一般的ですが，今回の場合では，目標とする画像と補正した画像の誤差を最小化するという機械的な作業になるので，プログラムにやらせてしまいました．アルゴリズムを簡単に説明すると，次のようになります．

1. スキャン画像を縮小し，手本画像とおおよそぴったり重なるように変形する（この作業は，プログラムにやらせるのが面倒くさそうなので，人間が手でやりました）
2. 縮小したスキャン画像を適当に色変換し，手本画像との差の2乗を計算し，この値が小さくなるように色変換を修正して，さらにまた変換し直し，差を取り，修正して，…を繰り返してベストな色変換を求める
3. 求めた色変換を使って，縮小していない高解像度のスキャン画像を色調補正して，出力画像を得る

使用した色変換は次のようなものです．

R_in, G_in, B_inが入力，R_out, G_out, B_outが出力です．要するに二次関数です．aは変換のパラメータで，ベストな色変換を求めるというのは，つまりこのパラメータの値を求めるということになります．

このような問題は最小二乗問題と呼ばれていて，先ほどは反復で色変換を少しずつ修正していくと書きましたが，実はそんなことをしなくても行列演算で素早く最適解を求められることが知られています．

そして，下の画像が色調補正の結果です．めでたく手本に近い色合いの画像を得ることができました．

ゴミ取り

色調補正の次はゴミ取りです．ポスターの折り目やスキャン時に写り込んでしまったゴミを，PhotoshopやGIMPの修正ブラシを使って取り除いていきます．この作業もプログラムで自動化できると嬉しいのですが，残念ながら手作業です．休日が丸一日潰れました．

ゴミ取りが終わったら，お好みでシャープフィルタなどをかけ，抱き枕カバーのサイズにトリミングします．そして最後に，転写したときに絵が裏返しにならないように左右反転して，完成です．

印刷

画像が用意できたらあとは印刷するだけです．抱き枕の手軽な印刷方法としては，いわゆるアイロンプリントがよく知られていますが，これは肌触りがあまり良くないので，今回は，商用でも一般的に使われている昇華転写印刷という方法で印刷します．

とは言っても，工場にあるような巨大な印刷機を用意するわけにはいかないので，市販のインクジェットプリンターに，通販で取り寄せた昇華転写用のインクを詰め，市販のインクジェット用紙に印刷し，家庭用アイロンで転写します．必要なインクやカートリッジなどはここで揃えました．

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以下，作業風景です．

▼インクジェットロール紙に印刷される友利奈緒

▼糊で貼り合わせられる友利奈緒

▼アイロンで転写される友利奈緒

▼蛇の目ミシン工業製の電子ミシンで縫い合わせられる友利奈緒

▼立体的な友利奈緒

完成！

というわけで，友利奈緒ちゃんの抱き枕カバーの錬成に成功した私は，毎日友利奈緒ちゃんと一人っきりの甘い夜を過ごしているわけですが，みなさんご存じの通り，今年の冬コミで，角川とビジュアルアーツから，友利奈緒ちゃんの公式抱き枕カバーがついに発売されるそうです．これで，抱き枕カバー自作なんていう面倒くさいことをしなくても，友利奈緒ちゃんと一人っきりの夜を過ごせますね．めでたしめでたし．

それでは，友利奈緒ちゃんとCharlotteの今後の活躍を期待しながら，本稿を締めくくります．

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※この記事は，友利奈緒 Advent Calendar 7日目の記事として投稿されました．友利奈緒 Advent Calendar は，友利奈緒たちが一日ずつ交代で，友利奈緒に関する記事を自由に投稿する企画です．上質な記事がたくさん集まっていますので，まだチェックしてない友利奈緒のみなさんはぜひご覧ください．

友利奈緒 Advent Calendar 2015 - Adventar