生成 AI についてのパブリックコメント

最近話題の生成 AI についてのパブリックコメント(AI時代における知的財産権に関する御意見の募集について|e-Govパブリック・コメント)を提出したので,その内容を載せておきます.

Ⅰ. 生成AIと知財をめぐる懸念・リスクへの対応等について

1 生成AIと著作権の関係について、どのように考えるか。

生成 AI はあくまでツールであり、生成物による権利侵害に関しては、AI 生成物を公開した者と、権利を主張する者の間で解決すべき問題だと考える。

類似性・依拠性の基準については AI 生成かどうかで区別する必要はなく、また AI 生成かどうかを捜査機関の介入がない段階で権利者が判断することは今後難しくなると予想されるため、区別できない前提で検討すべきだと考える。

法制度については現行のもので十分カバーできると考えるが、従来からの潜在的な制度の不備や無視されていた問題が生成 AI の普及により顕在化・頻発する可能性があるため、AI 生成かどうかにかかわらず適宜見直される必要はあると考える。

2 生成AIと著作権以外の知的財産法との関係について、どのように考えるか。

1の質問と同様、AI 生成物を公開した者が責任を持つべきだと考える。

3 生成AIに係る知的財産権のリスク回避等の観点から、技術による対応について、どのように考えるか。

意図せず知的財産権を侵害してしまうケースは AI 生成に限らず起こりうるものであり、これらを防ぐ技術や、その開発のためのデータセット提供は需要が大きいと考える。もし現行の法制度で、登録意匠や商標を学習目的で公開・使用することが難しいのであれば、そのための法整備も必要だと考える。

生成 AI のサービス提供者側に出力のフィルタリングや学習データのオプトアウトを義務づける場合は、他国と足並みを揃えないと、日本だけがサービスの対象地域から除外されて逆にコントロールが困難になったり不利益を被ったりする可能性が考えられるため、慎重に行うべきだと考える。

4 生成AIに関し、クリエイター等への収益還元の在り方について、どのように考えるか。

大規模なモデルに関しては、すべての学習データを追跡して適切に収益を分配することは不可能であり、仮にできたとしても学習データ一つあたりの分配額はわずかであるため不要だと考える。また、学習データの多くは、クリエイター以外の一般個人や企業が発信する情報であると考えられるため、権利の管理団体を作ってそこに登録されているクリエイターや出版社のみが収益を受け取るようなシステムも公平とはいえず、するべきでないと考える。

イラスト生成のファインチューニングに関しては、クリエイター本人が監修・公認したモデルをブランドを付けて販売する等の収益化は考えられる。声優や俳優の音声生成や人体の映像生成に関しても、ライセンス契約などでの収益化は考えられる。

ただし、立場の弱いクリエイターや俳優に対して、出版社や事務所等が AI 目的での利用許諾を事実上強要したり、業界全体でそれが常態化する懸念は考えられる。AI が関係するかどうかにかかわらず、立場上弱い末端のクリエイターを保護する仕組みは必要だと考える。

5 AI学習用データセットとしてのデジタルアーカイブ整備について、どのように考えるか。

ウェブ上で公開されるコンテンツおいては、検索や研究目的での著作物の自動収集が昔から受け入れられており、著作物を公開する側もある程度それを前提として公開していると考えられるのに対し、書籍や一点物の美術品等はそのようなことを前提とされていないと考えられるため、権利保護されている書籍や美術品をデータセットとして利用することは慎重に検討すべきだと考える。

権利保護期間が過ぎているものに関しては、AI 学習目的に限らず、解析しやすい形で公開することは有意義だと考える。

6 ディープフェイクについて、知的財産法の観点から、どのように考えるか。

パブリシティ権の保護対象になるような有名人に限らず、個人を特定できるような顔などの特徴は保護されるべきだと考える。情報のねつ造に関しては、ディープフェイク固有の問題ではなく、より一般的な問題として解決すべきだと考える。

映像や音声のねつ造に対して電子透かしで対処する場合、AI 生成物に電子透かしを入れるのではなく、実物のカメラやレコーダーの側に、電子署名やタイムスタンプ等を含む電子透かしを装置内で埋め込むようにしないと、悪意のある加工や偽造に対して効果がないと考える。

7 社会への発信等の在り方について、どのように考えるか。

著作権法 30 条の4が一般のクリエイターにも知られ、生成 AI のバッシングや法制度批判の根拠とされる一方で、著作権法以外の知的財産法や不正競争防止法等によって保護される内容が理解されていないと感じる。

イラスト生成に関しては、作風が保護対象ではないことと、仮に保護対象としてしまうと文化の発展やクリエイター自身へのデメリットが大きいことが理解されていないと感じる。

Ⅱ. AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方について

1 AIによる自律的な発明の取扱いの在り方について、どのように考えるか。

人がどれだけ関与したかを証明することが困難であることや、AI があくまでツールであることを踏まえると、人による発明と同じ扱いでよいと考える。

2 AI利活用拡大を見据えた進歩性等の特許審査実務上の課題について、どのように考えるか。

AI の有無に限らず、「容易に発明することができる」とは何なのかについて、その時点での最新の状況を把握した上で審査を行う必要がある。

上記の他、本意見募集に関わる項目についての御意見

世界で提供されているサービスが、法制度の都合上日本でだけ提供されない、ということのないようにしてほしい。

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