家を買った
きっかけ
数年前に就職して社員寮に住んでいたのですが,会社の制度上,長い期間は住めないことがわかっていたので,入寮してすぐに転居先を探していました.
もともと家を買うなんてことはまったく考えてなくて,はじめは普通に賃貸を探していたのですが,いろいろ考えたり調べたりしているうちに購入もアリだなと思い始め,結局,たまたま条件のよいところが見つかったので購入するに至りました.
はじめは,以下のような条件で賃貸を考えていました.
- 会社からはある程度遠い方がいい
- 緑が多く景色の良いところがいい
- 乗り換えは少ない方がいい
- 座って通勤したい
- 座れさえすれば,ある程度の長時間乗車は許容できる(スマホ万歳)
- 逆に,歩く時間はなるべく減らしたい(歩きスマホはだめ)
- 家賃は抑えたい
- となると,田舎の駅前かバス停前がよさそう
- 調べてみると,いくら田舎でも駅前はそれなりに家賃が高いのと,駅前といっても徒歩5~10分くらいはかかるので,やっぱりバス停前がよさそう
- しかし,駅から離れた郊外はそもそも物件の数があまりない
- 特に,生活音でのトラブルを避けたいので鉄筋コンクリート造が望ましいが,郊外は木造アパートしかない
- 借家にするか
- 調べてみると,借家はさらに物件の数が少なく,バス停に近い物件がない
- 中古戸建て購入ってどうなんだろう
- 1000 万未満で買えるよさそうな物件がたくさんあるぞ!
という感じで,いつのまにか中古戸建てが視野に入ってきていました.
戸建て購入という選択肢
住宅購入を考えるにあたって,そもそも新卒2年目の未婚の独身で,住宅ローンを組んで家を購入できるのか,というところがまず気になりました.
調べてみると,ローンを組む上で独身とかはあまり関係なく,定職に就いてて安定した収入がありさえすれば,地元の地銀やネット銀行系の住宅ローンなら普通に借りられるようです.
ここで改めて,住宅を購入するメリット・デメリットを真面目に考えてみると,以下が思いつきました.
メリット:
- 何年住んでも定額(維持費・固定資産税はかかる)
- 壁に穴開け放題
- 借家と比べて物件の選択肢が多い
- 売り主が売り急いでいる場合,いい物件が割安で売りに出されていることがある
- 長期出張などの場合に,荷物は家に残して,出張先では寝るだけの激安アパートを借りるという選択ができる
- 面白そう・勉強になりそう
デメリット:
- いらなくなっても簡単には手放せない
- 病気やけがで住宅ローンが返済できなくなるリスクがある
- 自分でメンテナンスする必要がある
デメリットに関しては,住宅ローン返済や固定資産税が重い負担になるような家ならともかく,1000 万円未満の家であればそこまで問題にならないように思いました.就職してすぐにローンで高級車買ってる同期とかいますし,そういうのに比べてもリスクは少なそうです.
メンテナンスについても,火災保険で風災・水害などの保障を付けておけば,あとは維持補修のためのお金(定期的な外壁塗装とシロアリ消毒)をある程度貯めておけば大丈夫そうです.
ちなみに,購入の場合は払ったお金が資産になるというメリットもありますが,いまどきはバブルではないので,戸建てを売っても二束三文にしかならないようです.資産価値とかはあまり期待せずに,自分で長く使い続ける前提でいたほうがよさそうです.
あと,賃貸の場合,世の中には会社から家賃補助が出るという素晴らしい企業があるようですが,うちの会社は残念ながらそんなものはないため,その点での賃貸に住むアドバンテージはないです(あったら迷わず駅前のマンションを借りて住んでます).
家探し編
あらためて,購入を前提に,家の条件を考えました.
- 金額は 1000 万以内
- リフォームなしですぐに住めるところ
- 4部屋以上
- ある程度バスの本数が多く座れる路線のバス停の直近
- 緑が多く景色のよいところ
2. の「リフォームなしですぐに住めるところ」というのは,中古住宅だと,窓が割れていたり床が腐ったりしていてリフォーム前提だったり,前の持ち主のゴミを処分しないといけなかったりということがわりとあるので,それは避けたいということです.
これらの条件で探すと,意外とたくさんヒットします.基本的に郊外の物件ばかりなので,バスの乗車時間が 30~60 分とかになりますが,満員電車を乗り継いでさらに駅から十数分歩くのに比べればぜんぜん楽なので OK です.
その後,賃貸と購入の両方を視野に入れて,1年くらい不動産情報サイトに貼り付き,よさそうな物件を見つけたら,実際に通勤を想定してバスに乗ったり,自転車で周辺の店舗などを回ったりしていました.
結局,しばらく目をつけて迷っていた物件が値下げされたのをきっかけに,そこを購入することに決めました.
売買契約
不動産屋に連絡して内見させてもらい,特に問題なさそうだったので,その後売買契約をしました.ここでする契約は,購入の予約みたいなもので,手付金を払って○○日までに売買を行う,という約束をするものです.
不動産屋の人から,不動産の取引にかかわる法律の説明,家が建っているところの条例に関する説明,建物自体の説明,契約の説明などを1~2時間くらい受けて,契約書にはんこを押して,手付金を支払いました.
住宅ローンを組む
家を購入するには,住宅ローンを組む必要あります.今回の場合は家の値段が 800 万円だったので,貯金がある人なら一括で払えそうですが,そんな貯金は私にはなかったので住宅ローンを組みます.
ここに一生住むつもりも今のところないし,あまり返済に期間を掛けるつもりはなかったのですが,月の返済額は少ない方が審査が通りやすいらしいのと,低金利で借りられるならとりあえず借りておいてお金が貯まったら繰り上げ返済すればいいやということで,800 万円のうち1割自己資金,残り 720 万円を 20 年払いということにしました.
結婚もしてないし入社2年目でお金を貸してくれるところなんてあるのか? と思ったのですが,前に書いたとおり,地銀やネット銀行の住宅ローンなら,若い単身でもわりと審査が通りやすいようです.審査にあたって銀行にいろいろな書類を提出するのですが,銀行によって提出を求められる書類がけっこう違ったので,審査基準も銀行によってかなり差があるんだと思います.
住宅ローンの審査
住宅ローンの審査において,だいたいどこの銀行でもチェックされたポイントは以下でした.
- 家の情報(土地と建物の価格,床面積,登記事項など)
- 家が面している道路の情報(広さや所有者,登記事項など)
- 本人の職業と収入
- 家の用途
登記事項等は,不動産屋があらかじめ書類を用意しておいてくれたので,基本的にそのコピーを提出するだけでした.自分で登記情報をオンラインで請求することもできます.
興味深かったのが 2. の道路の情報で,これはだいたいどこの金融機関からもチェックされました.道が極端に狭いとか他人の私道だとかのワケあり物件を弾くためだと思います.
4. の用途については,もともと住宅ローンは本人が住むという条件を前提に格安の金利になっているため,投資目的などでないことを確認されます.地元の地銀の場合は,担当者も地理がわかっているので,会社への通勤手段や通勤時間,なぜそこが気に入ったかなども聞かれました.
審査には,だいたいどこの銀行でも事前審査(仮審査)と本審査がありますが,それぞれの比重は銀行によってだいぶ異なるようです.銀行によって,事前審査は必要事項を記入するだけでさらっと,というところもあれば,事前審査の時点でがっつり書類揃えて,それが通れば本審査はだいたい通る,というところもあるようです.このあたりの情報,特に地元の地銀や信金の事情は,不動産屋の人が詳しいと思います.
私の場合,地元の地銀1行と,大手小売り系の銀行1行,あとは不動産屋と取引してるらしい地元の信金に審査を出して,審査が通った中でいちばん金利の低いところを選ぶことにしました.
ちなみに,収入を証明するために住民税の課税証明と所得税の源泉徴収票を取り寄せたのですが,両方の所得の金額が合わず,就職前にアルバイトしてた分の所得に一部申告漏れがあったことが発覚し,慌てて修正申告するハプニングがありました.
団信の罠
住宅ローンを組むとき,団体信用生命保険(団信)というのに入らされます.これは,お金を借りた人が死んだり大病になって返済できなくなったときに銀行側が損をしないためのもので,これの審査が通らないとお金を借りられません.
私の場合,健康上の理由でこれの審査がすべて通りませんでした.大学の時にストレスで体調を崩して,それ以来薬を飲み続けているのがだめだったようです.
銀行によっては,より審査基準の緩い保険やがん特約が付いたもの(ただし金利が上乗せされる)など,複数の保険会社から選べるところがあり,それらも一通り審査を出したのですが,ぜんぶだめでした.
あちこちの銀行で生命保険の書類を何枚も記入していて気付いたのですが,実は,銀行向けに団信を提供している保険会社は数社に限られていて,どこの銀行で申し込んでも委託先の保険会社は同じだったりします.そのため,団信の審査に引っかかると,おなじ保険会社に委託している銀行はぜんぶ審査に引っかかる,という罠があるようです.
団信を回避する
団信が通らないとなると,ほとんどの銀行で住宅ローンを組むことができないので,団信の加入が任意であるものを探す必要があります.選択肢として以下の2つが見つかりました.
- 無担保住宅ローンを利用する
- フラット 35 を利用する
1. は地元の信金が提供するサービスで,1000 万円までなら家を抵当に入れたり団信に入ったりせずお金を借りることができるそうです.ただし,金利がかなり高いし,給与振り込みや各種引き落とし口座をその信金に移すことが必要だったりでかなり条件が悪いので,これはないなと思いました.
2. のフラット 35 は最大 35 年間固定金利でお金を借りられるもので,団信の加入が任意になっています.ただし,購入する家の価値を示すために,機構の指定する適合証明というのを有償で受ける必要があります.幸いなことに,これは不動産屋のほうですでに取得済みだったので,特に追加費用はかかりませんでした.
それぞれで申し込みしてどちらも審査が通ったので,フラット 35 を利用することにしました.
ちなみに,団信に入らずローンを組んで,死ぬのはいいとして病気で働けなくなったらどうしよう,と考えてほけんの窓口に行ったのですが,担当の人いわく「その飲んでる薬ではたぶんどんな保険にも入れないし,病気になったら傷病手当なりいろいろあるし,そもそも月3万の返済のために高い金払って保険に入る必要ないでしょ,それよりがん保険どうですか?(要約)」と言われました.がん保険に関しては,がん以外の死因で死んでくれる分には保険会社としてはありがたいので,不健康な人でもがんの経歴さえなければ入れるそうです.
転居手続き
フラット 35 の審査が通ったので,あとは融資の契約と売買の履行だけなのですが,その際に新住所での住民票と印鑑証明を求められるので,引き渡しをする「前に」住民票を移し,新住所の役場で印鑑証明を取得する必要があります.
本来,転居手続きというのは,まず旧住所の役場で転出手続きをして,引っ越しをした「後に」新住所の役場で転入手続きをするルールなのですが,適当に嘘をついて前もって転入手続きをするのがしきたりのようです(ネットで調べるとこれはみんなやってることらしいです).
転入手続きの際,引っ越しした日にちと引っ越しの証明が必要なのですが,引っ越し日は適当に数日前の日にちを書いて,証明書類に関しては何食わぬ顔で売買契約書(未履行)を出したら OK でした.
引き渡し
新しい住民票と印鑑証明が揃ったら,不動産屋の人とフラット 35 の取扱店へ行き,大量の書類に目を通してはんこを押して,融資の契約と決済日の予約をします.
決済日には,不動産屋の人と司法書士の人と銀行で集まり,さらにフラット 35 の店舗へ電話で繋いで,「登記申請書記入」「融資実行」「融資されたお金を不動産屋の口座へ振り込む」のトランザクションをアトミックに実行して,最後に鍵をもらって司法書士の人へ登記費用と報酬を支払って引き渡し完了でした.
かかった費用
購入金額 800 万円に対して,一時金として以下の費用がかかりました.
- 頭金: 80 万円
- 住宅ローン手数料など: 24 万円
- 火災保険料(10 年一括),地震保険料(5年一括): 32 万円
- 登記費用: 26 万円
合計およそ 162 万円です.住宅を中古購入すると,頭金以外に,購入金額の1割程度かかると言われているようですが,実際それくらいかかりました.仲介で購入する場合や,購入時にリフォームする場合はさらにかかると思われます.
ちなみに,購入後にエアコンを4台取り付けたのですが,分電盤の交換と回路・コンセントの新設をする必要があり,エアコン購入金額と,それに含まれる標準工事費に加え,電気工事の代金として 30 万円くらいかかりました.これが地味にきつかったです.
入居後のトラブル
入居後しばらくして,2階の部屋に雨漏りがあることが発覚しました.ほとんどの中古物件は瑕疵担保免責といって,雨漏りやシロアリ被害などの隠れた瑕疵についてはノークレームノーリターンなのですが,幸い今回の場合は売主がリフォーム業者で,独自の保証があったため,無償で修理してもらえました.
ちなみに,最近では不動産売買の際に,住宅診断の紹介と,希望する場合の斡旋が義務になったようなので,欠陥住宅が心配な場合は,そういったものを利用するといいようです.
入居から2年経って
入居から2年経ってよかったこと:
- ガチ田舎ではなくあくまで郊外なので地域コミュニティなども堅苦しくない
- 在宅勤務が捗る.コロナによる郊外移住の動きを期せずして先取りした
- 部屋が余るほどたくさんあると夢が広がる
- 木造住宅の構造や屋内配線に詳しくなった
今後の課題
- 1階と床下のカビと湿気がやばいのでなんとかしたい
- 在宅勤務で会社からバス定期代が出なくなり買い物に行くのが困難になった(自家用車購入の機運?)
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